ジャックとピーターという名前の2人の男がいる。外国人で、ラテン系とゲルマン系の男だ。二人は、暗い土壁に、蝋燭が壁の掘られた穴に灯されているような部屋にいた。彼らの堀の深い顔を、ろうそくの光が揺らめいて陰影を強く醸し出した。玄関近くで、外は嵐のようで雷と大雨である。連日続く大雨で、二人は飢えていた。
大きな屋敷で、庭も広い。しかし、この家には二人しかおらず、屋敷は寂れて誰も近寄らなかった。
ジャックとピーターは、意を決して、知り合いのところに頼みに行った。子供たちを家に連れてきて欲しいと。
そして、今晩それが実行される日だった。
深夜、玄関を開けて待っていると、どこからともなく、一列になった子供たちが屋敷の玄関へ無言で入ってきた。子供たちは全員白い服で青白い光を放っていた。
屋敷の中の階段を子供たちは上がっていった。
ジャックとピーターは大喜びして、子供たちを部屋へ誘導した。
お腹をすかせながら、子供たちを部屋へ案内していると、踊り場に、東洋の老婆がひとり現れた。小さな絨毯をひいて、こたつに入っていた。ジャックとピーターに向かって、視線を送り続けていた。ジャックとピーターは気には止めたものの、無視することにした。
ジャックとピーターは吸血鬼で、普段は街で浮浪者を食べていた。しかし、この続く大雨で浮浪者が姿を消した。
ついに、知り合いの笛吹きに頼んで、子供たちに手を出してしまった。子供たちの血を飲みきり、死なせるか、血を少しもらって生かすかのどちらかだった。生かす場合、子供たちは吸血鬼として生きていかなくてはならない。吸血鬼になるまでは潜伏期間があり、1-2週間必要だ。その間は人間でいられるので、何度もその子供たちから血を貪った。
結局、吸血鬼になる2週間後になっても、二人は子供たちを殺すことはできず、吸血鬼を無尽蔵に増やしていくことになってしまう。
吸血鬼になると、人間の血のみ受け付けるようになるため、食事が取れなくなる。輸血または造血剤の投与をするようになる。
日光に弱くなり、引きこもりになる。
雨はその後も降り続き、子供たちの血の味を覚えてしまった二人は、何度も笛吹きを頼った。
ある日、子供たちがこの屋敷に姿を消すこと、子供たちに奇妙な病気が蔓延していることから、二人の屋敷を調べられることになる。
二人は笛吹きとともに、夜逃げすることにした。
他の街へ行ってやり直すために、夜道を歩き続けた。
のちに、あの街は吸血鬼の大人で溢れることになり、人間を食べ尽くしたあと、他の街へと大勢の吸血鬼が出ていくことになる。
二人は吸血鬼としてのルールを犯したこと、自分たちの過ちを目の当たりすることになる。人間がいない世界が目前まできていた。