いつだったかは忘れたけど、変わった夢を見たのを思い出した。

2020年X月X日

私は、誰もいない、だだっ広い大学のキャンパスに来ている。

私は男性で40代だ。

大手の法人の研究機関も敷地内にあるような大きなキャンパスだ。

その一角に、雑魚寝もできる居酒屋のような昼は食堂のような店があった。

私は、大学生に混じって、そこの飲み会に参加しにこの大きなキャンパスまで来たのだ。

私はこの大学の中退者だった。この店は懐かしいまま変わらなかった。

このキャンパスの雰囲気は薄暗いし、建物の色はレンガなどの温かみのあるものはこの店くらいで、

他は「工場」と言っていいほど活気が無かった。

でも、この大学からは、毎年優秀な人材と、研究結果が出ることで有名だった。

私はここの卒業生ではなくて、仕事に来ていた。学生の集まりがあるからと誘われて来たのだった。

宴会もそこそこの時間で終わり、帰ろうとした時、私は、ある研究室に向かっていた。

そうだ、私は、この宴会に参加することにかこつけて、大学に侵入して、

ある研究室の研究結果を盗むのが目的だった。

そして、目的となる研究室に向かった。

すると、その研究室の実験設備に近づくと、不思議な体験が起こった。

研究室の実験道具の前にいる自分がとても年老いて、最期を迎える瞬間になっていたのだ。

そして私は死んだ。

死ぬ時に、なぜこんな研究に固執していたのか、後悔した。

盗んだ研究自体は成功して、名誉も受けたのに、後悔した。

そのまま私は研究室で死んでしまった。

 

しばらくすると、私はまだ若者で、男性だった。

昔の自分だった。

その時、ある女性と付き合っていて、その人と結婚をして、結婚式をあげることが、

元の人生に戻れるトリガーになっているのを知っていた。

彼女に話をして、私はどうなるのか聞いてきた。私はこの世界から消えてしまう。

でも、元の自分もこの世界にいる。だから、私がいなくなっても、元の自分がいるはずだ。

なぜ、この人と結婚することが私が戻るトリガーなのかはよくわからないけど、

とにかく結婚して、結婚式をあげた。私を信頼しているのか、彼女は協力的だった。

結婚式は、夜にひっそりと行われた。

場所は、二人が通った大学キャンパスだ。

その大学で、数人で結婚式をあげた。

すると、目の前にブラックホールのような、宇宙が広がっている空間が現れた。

私は、そのブラックホールのような空間に飛び込むことで、元の世界に帰れることを知っていた。

私は、そこに手を伸ばした。彼女が私を制する。行かないでって目で訴える。

でも、私は彼女にキスをして、そのブラックホールに飛び込んでいった。

不思議と彼女と私は後悔がなかった。気持ちが通じ合っていたと感じたからだ。

 

そして、私は、長い宇宙遊泳に旅立った。宇宙の端っこと言われる場所に来ていた。

なんて気持ちのいい場所だろう、大宇宙という言葉を全身に感じていた。

星の一つ一つがかけがえのない、美しさに讃えられていて、この静けさの中に、

オーケストラを奏でているような感動があった。

ゆっくりと流れる時間が過ぎ去り、私は、研究室の床で目が覚めた。

 

この研究は、人が過去にした後悔とこれからする後悔を見せ、

その後悔を修復するための研究だったことがわかった。

結婚して、結婚式をあげたことが、私の記憶での後悔を消したのか、

本当に私が彼女と結婚をしているのかわからないけど、

今の私に人生の後悔がなかった。

 

彼女と別れたことは、研究者として成功したいからという理由だった。

しかし、私は、彼女と別れた後、自分に自信を無くして大学を中退してしまう。

大学の正式な研究者でもあり、大企業と連携研究をしている彼女に私は嫉妬していた。

だから、この研究室に来て、彼女の研究を盗もうとしていたのだった。

私は、物音がするのを聞いた。薄暗い研究室の出入り口に立つ女性を見た。

 

「あなた、何しているの」

 

女性は私がキスしたあの女性だった。私が嫉妬していたあの女性だった。

私は、侵入がバレたと焦りながらも、観念していた。

無言でその場に座り込んだまま微動だにしない。

 

「これは…その、君の研究を盗もうとしていたんだ」

 

彼女は、優しい顔で、私を見つめている。

 

「盗むって、この研究はあなたと私の研究じゃない。

今日もこんなに夜遅くまで研究熱心にやっているんだから、

ほとんどあなたの研究といってもいいくらいよ。」

 

私は、彼女が何を言っているのかよくわからなかった。

 

「たまには、研究室の床じゃなくて、我が家のベッドで寝たら?」

 

私は、頬にキスされた。

私は、どうやら、彼女と本当に結婚していて、本当に一緒に研究しているんだった。

「僕たちの研究は、成功したよ。今、成功したんだ」

彼女の肩をわしづかみして話すと、彼女はキョトンとしてから、私を抱きしめた。

 

「おかえりなさい、あなた」